W@nderFabric実店舗
Year
2023年
summary
国登録有形文化財旧仲町郵便局
日本のさまざまな文化が外国の方にカッコイイものとして受け入れられています。
消滅しつつある日本伝統着物を、カジュアルなキモノキャップにコンバートすることで存続・継承させ、世界中にオンラインのみで発信を続けているヘッドウェアブランド、「ワンダーファブリク」初の工房兼実店舗が埼玉県本庄市に完成した。ブランド設立から5年の歳月が経過し、世界各国からの問い合わせが殺到してきた中、自治体から町おこしの一環として物件の紹介があった。
そこは明治・昭和初期には繭の一大集荷場、日本のシルクロードとして繁栄した一丁目一番地。現在ではシャッター街となっている。招かれた物件は国登録有形文化財旧仲町郵便局。昭和9年(1934年)に建築され現在も当時の景観をとどめ、街の象徴的な建造物で既に耐震調査と耐震補強工事を終えているが、郵便局の移転に伴い令和元年(2019年)からは空き家となっていた。
ワンダーファブリックの理念と、日本伝統着物の原材料である繭と、商品を各地へ発送する郵便局がリンクし、自治体の協力の元、すぐに物件調査と設計に取りかった。また、歴史的・社会的にも意義のあるプロジェクトの為、ものつくり大学岡田研究室にもご協力を頂いた。
岡田研究室と打ち合わせを重ねる中で2つのコンセプトに辿り着いた。1つは「日本の伝統着物と伝統建築の融合」もう1つはリユースでもリサイクルでもなく、少し手を加えることで価値を上げる「アップサイクル」。
メインの商品棚は長さ6.2m、高さ3.2mの全8段で構成され、日本建築の軒からインスパイアされた板金と野地板と垂木で構成される。軒の角度は0寸勾配~6寸勾配へと上段になるほど急勾配になり、人の目線から上段も下段も商品が均等に見えるよう計算されている。軒上に置かれた多彩なキモノキャップ、反射効果のある板金、連続する106本ものの垂木は見る者を飽きさせない。日本各地の貴重な生地・文化・伝統をアップサイクルされた商品が、雨や日差しから軒に守られているかのような光景にも感じ取ることができる。
軒に使用されている垂木は、ものつくり大学の規矩述の実習で使われた廃材で、墨の跡など各所にその痕跡を残すが、アップサイクルというストーリーの中でむしろそれが魅力となった。
建物内に入ると郵便局当時の名残りであるコの字型のカウンターとその上に造られた額縁に囲まれる。襖を開け、その先の日本庭園をフレームインさせるかのように商品と棚が額縁に切り取られる。
これらの手法は「日本の伝統着物と伝統建築の融合」の形であり、過去・現在・未来、時代ごとのインテリアレイヤーの積み重ねによって継承されて行く。
木造2階建