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MINKA

Year

2024年

summary

一戸建ての住宅


過去・現在・未来を繋ぐプロトタイプ住宅に

 埼玉県上里町の主要道路が交わる交差点の一角に建築家の自邸として過去・現在・未来の時代を繋ぎ、社会問題に向き合うよう再プログラムをした住宅を設計した。めまぐるしい時代の変化によって歪が生じている昨今、日本の知恵を継承しながら最新技術も取り入れ、社会に影響を与える器になることを願う。

 住宅の歴史を紐解くと、民家・集落・里山・大きな茅葺屋根・田の字型住宅・庇・土壁・畳・障子・瓦・格子・土間・いろり・縁側・高窓・大黒柱・木造軸組・長屋門・養蚕農家の高窓・庭といったようなワードが並ぶ。これらは高温多湿な環境に対応する工夫と、自然との共存共生。人々のコミュニティのあり方も形成する多様な仕掛けであった。膨大な時間をかけて自然の営みの中で発生した日本建築は理にかなっており、景観を含めここで現代的に再現をした。

 多用途かつ安全地帯を作り出す長屋門を道路側に配置し、そこからアプローチは17°折れ曲がり母屋へと繋がる。鳥居をくぐり折れ曲がった参道を進むような体験により精神的な変化を促し、玄関に入ると壮大なワンルーム空間と在来木造軸組み空間に包まれ安堵感に包まれる。土間を模したLDKは、玄関との段差がなく訪れる人にとって心のバリアフリーにもつながる。大勢で囲ういろりのような装置は6mほどのダイニングテーブルで代用した。座席数が多いことは来客を促す効果もあり、日常ではリビング学習場となる。1階は廊下のない田の字型住宅のように単純なグリットで構成し、南に設けた大開口テラスサッシを開けると軒裏とテラス床の効果で外と中が曖昧になり縁側のように開放的な空間となる。2階は4室の個室だが、全て扉がなくプライバシーを保ちにくい1つの空間での生活となるが、人類の長い歴史の中ではむしろその方が自然である。一つ屋根の下、助け合いながら迷惑をかけながら気を使いながら1つの集団として暮らしていくことを決めた。

 現代社会では地球環境問題も切って離せない。この住宅ではサスティナビリティ―にも配慮し省エネ化や長寿命化も試みている。
省エネ性能を高めるためにパッシブデザイン(自然のエネルギーを活かして、「夏は涼しく、冬は暖かく」を実現する建物の設計手法)も取り入れ、建物形状、窓の位置・大きさ、庇、高性能サッシ、二重断熱材、通気工法、熱交換器、ハニカムブラインド、窓枠密閉形状、吹き抜け、天井扇等により真夏と真冬はエアコン1台で朝全室を適温にし、魔法瓶のような空間に閉じ込める。特に太陽光のコントロールが重要であり、冬場は鋭角に入ってくる南からの太陽光を大開口から取り入れ床コンクリートを暖める(ダイレクトゲイン)。夏場は適切な庇配置とスダレによって光を遮る。窓の開き方も季節風に準じ、高窓による煙突効果によって通風を促すことでエアコンを使わずとも真夏は最高25℃以下、真冬は最低14度以上となる。

 建物の長寿命化にも取り組んだ。日本の住宅は平均30年で解体され大量の資源を30年周期で無駄にしている。人口減少による空き家問題も深刻化してきている。
耐震性や老朽化の問題もあるが、根本的な要因として「使う人がいなくなる」「住宅専用で建ててしまうため他の使い道が難しい」「壊さないと税金等、維持管理に費用が掛かる」などが上げられる。
耐震性や耐久性を高めた住宅でも、使う人がいなければ取り壊されざるを得ない。
そこで、この住宅では専用住宅以外の用途への変更が容易なように設計している。
200㎡以下に抑えることによって建築基準法の縛りも軽減させ、フレキシブルに間取りを変えられるよう間仕切り壁を減らし、吹き抜けは床を張れるように計画した。ギャラリーやカフェ、店舗、事務所、学習塾、スタジオ、レンタルキッチン等にも変更でき、個室が多く必要な宿泊施設、寄宿舎、二世帯住宅等の場合は個室が最大12部屋確保でき、借手が見つかりやすいストーリーを建設段階から設定した。収益の上がる建物は壊されないであろう。

 元々人類は三世代の家族親戚と近隣との集団を形成し、互いの家の中で協力をしながら仕事・子育て・介護を行っていたが、今はそうではない。施設や行政システムにはまらないケースが多くみられ、家庭かその他学校・職場・施設の二択に迫られ歪をきたしているのも現状。社会から住宅に求められる機能はより複合的で、より曖昧な第三の居場所のようにあるべきと考え、地域に開ける住宅を設計した。これからの時代は急速に発達したAIや仮想空間やデジタル技術によって便利になる反面、また新たな歪をきたしていくのであろう。過去に学び、今を生き、未来を創造する現段階でのプロトタイプのような住宅(民家)である。

木造2階建+木造平屋建

延床面積 196.40㎡

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