A small experiment
- sudashuji
- 11月26日
- 読了時間: 4分
更新日:2 日前

「実験」とは、未知の効果や法則を発見するために行う試行を指す。
(ウィキペディアより)
建築の仕事に携わる中で、上里町、本庄市、行田市などで地域のまちづくりに関する相談を受けることが多くなって久しい。各地域には固有の背景があり、他地域の成功事例を単純に適用できるわけではない。「ビジネス化しなければ継続しない」といった一般論も、この地域には必ずしも馴染まないように感じていた。
そうした中、上里町で新たな超小規模社会実験が動き出し、私も参加することになった。きっかけは、空き家を一日だけ借りてクラフトコーラを販売してみるという、気軽な発案であった。
当初は、地域住民同士の雑談が発端である。「LINEグループを作ろう」「近所にうどん店ができたので行ってみよう」「閉業する整体院を誰か活用できないか」──そんな日常の延長線上で、「11月22日の町役場主催マーケットに合わせて空き家を開き、クラフトコーラを販売してみよう」という話が自然とまとまった。上里町の特産である梨を材料に使う案も、その過程で生まれた。
主催者は、デジタル分野に精通し、趣味として10年間クラフトコーラを研究してきた人物。空き家の所有者は、蕎麦業界で著名な方で、自宅に本格的な蕎麦屋空間を整備したものの営業には至らず、活用方法を模索していた人である。町役場がその二者をマッチングし、目的を厳密に定めることなく、立派な蕎麦屋空間を一日限定でお借りして販売を行うこととなった。地域の特産を生かしたクラフトコーラを通じ、交流の中から何か新しい可能性が生まれるかもしれない─そうした期待を込めた試みである。
神保原駅北のまちづくりは、この10年間で行政や大手企業が複数回検討したものの、採算性の観点から実現に至らなかった。「商圏にならない地域」であることを前提に考える必要があると私は感じている。重要なのは、大規模な理想を掲げることではなく、まず個人が経済に縛られずに動ける仕組みだ。
1960年代にはビートルズが「皆への愛」を説いたが、現代ではBTSが「自分自身を愛すること」の重要性を発信し、価値観の転換を象徴している。地域の取り組みも同様で、まずは無理のない範囲で、自分のために動き出す姿勢が求められているのであろう。
今回の企画も、まさにその延長にある。採算を重視する取り組みではなく、終了後にささやかな打ち上げができれば良い。数名が共通の何かでつながることの愉しみである。
しかし、当日の結果は予想を上回った。マーケットの来場者数は多くなかったが、売上は目標を大きく超え、何より参加者の反応が印象的だった。
「もう一杯飲みたい」「原液を購入できるか」「次の販売予定はあるか」「普段使われていないのが惜しい空間だ」「この厨房で料理をしてみたい」「蕎麦も食べてみたい」─こうした声が相次ぎ、空き家と地域が持つ潜在力が一気に表出した瞬間であった。
今回の活動はあくまで一度の試みであるため、拙速な結論は避けるべきである。しかし、このような小さな実験の積み重ねが、やがて「神保原モデル」と呼ばれる新たな地域活用手法へ発展する可能性を感じたのも事実だ。
関係者の一人は常々こう語る。「行政や企業では縛られる領域があり、動けない」「全員の理解を得ようとすると自分が息苦しくなる」「やりたい人が既成団体ではなく個人でやればよい」
今回の実験を通じ、私自身もその言葉の意味を実感した。主体はいつも自分であり、自らの判断で小さくとも動き出すことが、結果として地域全体の変化につながる。鶏が先か卵が先かであり、まずは人目を気にせず一歩を踏み出すことが重要だ。
まちづくりは壮大な事業だけを意味しない。「自分のために、なんとなくやってみる」─その行為の積み重ねこそが、この地域における新しいまちづくりの形となっていくと確信した。








最後に、本取り組みに声をかけてくださったデジタル省参事官補佐、まちづくり推進課課長、30代独身男性、文章整理に協力頂いたチャットGPTにこの場を借りて謝意を表したい。




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